Special! 「私の好きな孤独」発売記念

写真集「私の好きな孤独」発売記念
松田美由紀×片山瞳 特別対談
vol.1
special3.jpg                                    構成:安部実奈

2年の月日をかけて、二人の女優により完成された、写真集「私の好きな孤独」。
カメラを持つのは、表現者として、その才能をますます輝かせている、松田美由紀。
レンズの前に立つのは、モデルから女優へと、存在感に磨きをかける、片山瞳。
愛情を込め、育み合った、この写真集を前に、二人の対談が実現した。

「ホンモノに触れることが、一番の幸せで、贅沢なんじゃないかなって。
この撮影も、瞳の潜在的なものに触れようと入っていくところはあったかな」

:初めて美由紀さんにお会いしたのは、美由紀さんのホームパーティーに呼んでいただいた時のこと。「あの、松田美由紀だ!」ってそればっかりでした(笑)。ご本人に会ったら、自分で勝手に想像していたイメージとギャップがあって驚きましたね。とてもチャーミングで、すごく愛があふれている人だなって。そのあと、美由紀さんが、私に興味を持ってるから、ちょっと撮らない?と声をかけてもらって、撮影することになって。私は映画「世界はときどき美しい」に出るまでは、17からずっとモデルをやっていて、いろんなカメラマンの方に撮っていただいてきたけど、それまでの撮られる感覚と全く違ったことが衝撃的でしたね。実際に、どんどん近くに寄って来てシャッターを押してくれて、それがただの被写体として見られているんじゃなく、いち人間として対峙してくれているんだなって感じて、すごくうれしかった。普通に「写真を撮る」んじゃなくて、「心と心を通わせる」んだって気づいたんですね。
:最初は緊張してたよね。
:もう、最初は「松田美由紀さんに撮られる」ってことで、緊張したまま現場に入ったんだけど、撮影が進むにつれて、美由紀さんからぐーっと入ってきてくれるから、それが本当にうれしくって、緊張を忘れていましたね。モデルとして、形を撮ってもらうってことと全く違う、心にぐっと入ってきてくれる感じが、すごくうれしかった。
美由紀さんは初めて瞳ちゃんに会った印象を聞かせてください。
:瞳のことは、「世界はときどき美しい」の企画段階で初めて知って、とにかく外見がタイプだったの。それで、写真を撮ってみたいと思うようになって、実際に撮れることになった時カメラを構えたら、瞳がゆっくりと動いてくれたの。基本的にすごくせっかちで、バタバタしちゃう私にとって、瞳の中に流れているゆっくりとしたリズムが、すごく落ち着いて、気持ちよかったのね。
:私、ゆっくり過ぎて、ダメかしら、って思ってた。
:そんなことない。それが私にはすごく心地よかった。
:よかった!
:瞳は普段はすごく素直で、受け身な雰囲気でいるけれど、レンズを通すと、全くの別人になるのには本当にびっくりした。すごいパワーが出るのよ。すごくシャイな部分が、瞳自身を覆っているんだろうね。
:うれしいです。
:タイプって、言葉にしちゃうとあっけないけれど、本当は言い表せないほどのたくさんの感情があると思うんだ。人間が恋したり、愛したりする部分って、肩書や収入や見た目なんかはごく一部で、実際に人が惹かれるのは、目に見えないオーラだとかエネルギーだとか、ちょっとした仕草だとか、表情だとか、キーワードにしにくいものなんだって。言葉で言い表せない部分に、いろんな「好き」と思う要素が隠されているわけで、そういう意味では、瞳に対しての気持ちは、恋愛感情に近いものがあったのかもしれないな。
:人を好きだと思う気持ちって、恋愛だ、友情だ、って線引き、出来ないですよね。同性だって、共通点が全くなかったり、たまにしか会わなかったりしても、何故か惹かれ合っていて、親友になるケースもたくさんあるもの。
:そういう感覚が、私たちの中にはあったのかもね。
:写真集を作っている時に、夜ひとりで部屋で寝ながら、ふと美由紀さんのことを思い出して、泣いたりしていましたもん(笑)。
:最初に1日がかりで撮影した時、疲弊しきって、瞳、寝込んでたものね。
:そう。出し切っちゃって、もう内臓機能が全部お休みしちゃったみたいだった(笑)。
:お互いに、すごくハードな撮影だったけど、不思議と辛くなかった。
:それだけぶつかりあえたからだと思うの。充実した時間でした。
:私は、すごく深く人に入り込んじゃうタイプだから、逆に表面的に人と接することが結局出来ないのよね。その人の本質はどこか、ホンモノはどこかって、入り込んじゃう。でも生きていて、ホンモノに触れることが、一番の幸せで、贅沢なんじゃないかなって。この撮影も、瞳の表面をどう写真に切り取るか、なんてことじゃなくて、瞳の潜在的なものに触れようと入っていくところはあったかな。
美由紀さんにとって、瞳ちゃんはスムーズに入っていける相手だったんでしょうか?
:それは、そんなこと、全然なかった(笑)。瞳は、心の中に道ができていなくて、道を作っていくような、開拓していくような作業だった。
:うん。
:自分を知ろうとしてこなかった人には、心に道ができていないの。自分は何者なのかを知らない人、知ろうとしない人って、案外多いと思う。日常生活をする上で、そんなに必要な行為じゃないからなのかな。でも実は、すべてが自分の感情から生まれているんだって思う。幸せの定義は、「自分が幸せだ」って思うことが幸せなんだよね。人から羨望を受けられるような状態を手にすること、イコール「幸せ」なわけじゃない。貧しくとも最高に楽しく毎日を暮らせていたら、幸せだし、多大な富と名声を手にしていても、つまらなくて孤独な毎日だったら、ちっとも幸せじゃない。自分が「幸せだ」と感じる、核みたいなものが見つかれば、幸せは意外と簡単に手に入ることなんじゃないかな。
:生きるってことは、実はその、自分の「幸せ」探しなのかも。
:多くの人は、「他の人から見て、自分は幸せかどうか」で幸せを量って、探しているところがあるよね。自分がどう感じるかどうか、ってことが一番重要だと私は思うんだ。さらけ出す必要はないけれど、自分がどう感じるのかってことを知ることは、奥底にある自分と、対外的な自分との間に道を作ることでもあると思うの。
:その道が開通していれば、人との心の通わせ方が楽になるってことですよね。
:そう。行き来が楽になれば、バランスをうまく取れるようになるのよね。でも、自分が何者なのかを見極めることは、ひとりではやりきれないと思う。人は自分のことを褒められないじゃない?人に褒めてもらって、初めて自分を知ることができる。だからそのために、人がいるんじゃないかしら。
:でも、自分を褒めてくれる、その人にめぐり逢うのって、すごく難しいですよね。だって、一般論として「いい、悪い」ではなく、本質をついて自分を分析してくれて、ストレートに諭してくれる人でないといけないんだもの。撮影中に美由紀さんに、私について言われることがたくさんあって。それまでは気付かずに無意識で過ごしてきたから、そこで漠然とではあったけれど、気付かされたことがたくさんあったな。だから、私にとっては、この写真集での出会いは、本当に宝物だと思ってるんです。
:今ね、私にとって、「褒める」ことが課題なの。邪魔なもの、間違っているものっていうのはすぐ分かるものでしょ?せっかちだから、それをすぐ相手に伝えたくなってしまう。その先にあるきれいなもの、美しい部分を評価できないところがあるの。
もっと上を見たい、もっと素晴らしいものを見たい、と、理想が高くて、完璧主義なところがあるんじゃないですか?せっかちなところが顔出して、ストレートに「違う!」の1ワードに要約してしまうような。
:そうだね、確かに…(笑)。
:それは、私が一番悩んだところかも(笑)。
:「あなたは素晴らしいんだから、もっとあそこへ近づけるでしょ?」と言えればいいんだけれど、せっかちだから、省いてしまう。褒めるような言葉の使い方を覚えないとなって(笑)。
:突き放されるような言葉を投げかけられるから、それを受け止めて、うーんと考えてしまうところが私もあって。理解するまでに時間かかって。でも、その作業をしたことがすごく私の力になりましたね。

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